政府は「医療DXの推進に関する工程表」を定め、2030年度を目途に保健、医療、介護の情報を活かせる基盤をつくることを目指しています。柱は全国医療情報プラットフォームの創設、電子カルテ情報の標準化等、診療報酬改定DXの3つで、自治体システムの標準化の取組とも連動します。医療機関の中だけで完結する話ではありません。
要点
- 工程表は2030年度を目途に、5つの到達点の実現を目指しています。
- 基盤は新設ではなく、既にあるオンライン資格確認等システムを拡充してつくります。
- 実施主体として、社会保険診療報酬支払基金を抜本的に改組する方針が示されています。
医療DXとは何を指す言葉なのか
工程表は医療DXを、保健、医療、介護の各段階で発生する情報の全体が最適化された基盤を構築し、活用することを通じて、国民自身の予防を促進し、より良質な医療やケアを受けられるように社会や生活の形を変えていくことと定義しています。情報の受け渡し方そのものを設計し直す取組だという位置づけです。
背景は人口構造の変化です。工程表は、2021年現在で28.9%となっている高齢化率が2050年には37.7%に達する見込みであることを挙げ、社会保障制度を将来にわたって持続可能なものとしていく必要があると述べています。
工程表が立てる3つの柱
施策は3つの柱に整理されています。順に見ていきます。
- 全国医療情報プラットフォームの構築
情報を共有する土台をつくる柱です。全国の医療機関、薬局をつなぐオンライン資格確認等システムのネットワークを活用し、拡充する形で基盤に育てます。 - 電子カルテ情報の標準化等
共有する情報の形をそろえる柱です。診療情報提供書、退院時サマリーなどの3文書と、傷病名、アレルギー情報などの6情報から共有を進め、標準規格に準拠したクラウドベースの標準型電子カルテの整備も行います。 - 診療報酬改定DX
制度改定に伴う作業の重さを下げる柱です。改定のたびに医療機関やベンダが短期間で集中して個別にシステム改修やマスタメンテナンス等の作業に対応することで、人的、金銭的に非常に大きな間接コストが生じていると指摘しています。そこで共通算定モジュールの開発を進め、2025年度にモデル事業を実施した上で、2026年度に本格的に提供します。
自治体と介護の現場にも及ぶ
工程表が課題に挙げるのは紙の書類の往復です。患者にとって書類や手帳を持ち運ぶ手間になっているだけでなく、各機関において都度入力する必要があると指摘し、関係機関や行政機関等の間で必要な情報を安全に交換できる情報連携の仕組みを整備するとしています。介護事業所が保有する現場の情報も共有できる基盤を構築するとされ、介護情報は2026年度から、自治体システムの標準化の取組の状況を踏まえて全国実施をしていく段取りです。
誰が作り、どう点検するのか
工程表は、医療DXに関連するシステム全体を統括し、機動的で無駄のないシステム開発を行う必要があるとして実施主体を定めています。社会保険診療報酬支払基金を、審査支払機能に加えて医療DXに関するシステムの開発、運用主体の母体とし、抜本的に改組するとしています。地方関係者の参画を得つつ、国が責任をもってガバナンスを発揮できる仕組みを確保するとも書かれています。
進捗状況は医療DX推進本部または同本部幹事会で定期的に確認し、デジタル技術の進歩の状況なども踏まえて必要に応じて柔軟な見直しを行うとされています。
公共セクターの仕事としてどう読むか
医療DXは名前のわりに、医療の専門知識だけで動く領域ではありません。標準規格を決める、業務フローを引き直す、国と自治体の役割分担を整理するといった仕事が大半を占めます。情報基盤の移行や、制度と業務の橋渡しの経験があれば接点を見つけやすい領域です。
よくある質問
医療DXは行政と医療機関だけで進むものですか
工程表は基本的に政府の取組を内容としたものですが、医療DXの実現にあたっては医療機関や介護事業所等の関係者、そして国民一人一人が自立的、自発的に取組を進めていくことが不可欠だと書かれています。
電子カルテはいつまでに行き渡る想定ですか
工程表は、概ねすべての医療機関において必要な患者の医療情報を共有するための電子カルテの導入を目指すとしています。共有の仕組みは2024年度中に、電子カルテ情報の標準化を実現した医療機関等から順次運用を開始します。
まとめ
医療DXの工程表は、医療の情報を誰がどう持ち、どう受け渡すかを国として決め直す計画です。3つの柱は、共有の土台をつくる、情報の形をそろえる、制度改定の作業負担を下げるという役割分担です。制度と情報基盤をつなぐ大型の行政改革として捉えると、関わり方が見えやすくなります。
出典:医療DXの推進に関する工程表(内閣官房 医療DX推進本部)
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