インフラ老朽化対策に11,591億円 – 国土交通省 令和9年度概算要求をやさしく解説

国土交通省は令和8年8月、令和9年度予算の概算要求を公表しました。一般会計の要求額は8兆7,694億円で、うち道路や河川、港湾などの整備にあてる公共事業関係費が7兆6,761億円を占めます。柱の一つが「インフラ老朽化対策等による予防保全型のインフラメンテナンスの実現」で、11,591億円が要求されました。

目次

要点

  • 令和9年度の要求では、公共事業関係費に7兆6,761億円が計上されています。
  • インフラ老朽化対策等による予防保全型のインフラメンテナンスの実現に11,591億円を求めています。
  • 国土強靱化の取組に必要な経費は金額を示さない事項要求とし、予算編成過程で検討するとしています。

そもそも「概算要求」とは何か

概算要求とは、各省庁が翌年度に必要と考える予算の規模と使い道を財務省に示す手続きです。金額はあくまで要求で、年末の予算編成を経て政府案が固まります。その省庁が翌年度に何を優先するのかを読み取る資料です。

金額を確定させない「事項要求」という扱いもあります。今回は「第1次国土強靱化実施中期計画に基づく取組の推進に必要な経費」がこれにあたり、事項要求を行い予算編成過程で検討するとされました。金額が空欄でも、実施の方針は固まっているという読み方になります。

要求の全体像

一般会計の要求額8兆7,694億円のうち、『「強く豊かな日本」投資枠』が内数として示されています。

要求全体は3本柱で整理されています。国民の安全・安心の確保、持続的な経済成長の実現、個性をいかした地域づくりと持続可能で活力ある国づくりの3つです。

焦点は「予防保全」への転換

中心に置かれたのは上下水道の老朽化対策で、インフラが持つ機能を将来にわたって適切に発揮できるようにすることが目的です。手段として挙がるのが、国土交通省インフラ長寿命化計画(行動計画)に基づく取組と、広域的、戦略的なインフラマネジメントの取組です。施設を単体で直すより、地域全体の施設群をまとめて管理する発想です。

  • 事故発生時に社会的影響が大きい上下水道管路の更新と、迂回経路を確保するリダンダンシーの確保
  • 橋梁、トンネル、道路附属物等の道路施設の老朽化対策
  • 河川管理施設や砂防事業等における持続可能なインフラメンテナンスサイクルの実現

基本方針は、社会資本整備は未来への投資でありストック効果の最大化に取り組む必要があるとしたうえで、事前防災及び予防保全型メンテナンスの徹底とともに、既存施設の計画的な維持管理、更新、利活用を図るとしています。壊れてから直す事後対応から、壊れる前に手を打つ予防保全へ。これが要求を貫く考え方です。

実行するのは自治体、支えるのは外部人材

インフラを実際に管理するのは、多くが市町村などの地方公共団体です。要求では防災・安全交付金を通じて、激甚化、頻発化する風水害や土砂災害、大規模地震、津波に対する防災対策と、予防保全に向けた老朽化対策など地方公共団体等の取組を集中的に支援するとしています。

そこで並ぶのが官民連携です。民間の資金やノウハウを活用した多様なPPP/PFIを通じて、低廉かつ良質な公共サービスを提供することが掲げられ、手立てとして地方公共団体への専門家派遣等を通じたスモールコンセッションの案件形成や、職員の能力向上に対する支援が挙げられています。自治体だけでは背負いきれない部分を外部の専門人材が補う前提が、予算資料に明記されています。

担い手の確保、育成や生産性向上による持続可能な建設業の実現も独立した項目です。予算が積まれても実行する人がいなければ工事は進まない、という課題認識が読み取れます。

公共セクターの仕事にどうつながるか

予防保全への転換も、広域的な管理も、官民連携も、共通するのは「作る」より「使い続ける」ための計画づくりだという点です。どの施設をいつ更新するかを整理し、費用を長期で見通し、複数の自治体でまとめて発注できないかを検討する。こうした業務は自治体の職員だけで完結しにくく、外部の専門家が入る余地が生まれます。

よくある質問

概算要求の金額は、そのまま来年度の予算になりますか

なりません。概算要求は各省庁が財務省に示す要求で、その後の査定と調整を経て政府案が決まります。要求額と最終的な予算額に差が出るのは通常のことです。

「予防保全」とはどのような考え方ですか

壊れてから直すのではなく、傷みが小さいうちに計画的に手を入れて施設を長く使う考え方です。一度に大きな費用がかかる更新を避けやすくなります。

まとめ

令和9年度の概算要求は、新しい施設を増やす話よりも、すでにあるインフラをどう維持し使い続けるかに重心があります。公共セクターの動きを追うときは、金額の大きさより、その予算が何を変えようとしているのかを見ておくと理解が深まります。

出典:国土交通省「令和9年度国土交通省予算概算要求概要」

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