総務省は2025年(令和7年)12月17日、「自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画」の第5.0版を策定しました。自治体が何に取り組むべきかを国が整理し、支援策をあわせて示した文書です。読み解くと、自治体DXの最大の制約が技術ではなく人にあることが見えてきます。
要点
- 窓口改革、情報システムの標準化、AIの利用推進など8つの重点取組事項が示された
- デジタル人材の確保と育成に関する方針を策定済みの市区町村は416自治体にとどまる
- 内部だけでは高度専門人材を賄えず、外部人材の活用が前提として組み込まれている
計画が前提にする人口減少
出発点は人口減少です。急速な人口減少が見込まれるなかで自治体が持続可能な形で行政サービスを提供していくために、デジタル技術やAIの活用で業務効率化を図り、職員の負担軽減とあわせて人的資源を行政サービスの向上につなげることを求めています。
示された8つの重点取組事項
重点取組事項は、フロントヤード改革、情報システムの標準化、デジタル共通基盤の共通化、公金収納におけるeL-QRの活用、マイナンバーカードの利用推進、セキュリティ対策、AIの利用推進、テレワークの推進の8つです。このうち、仕事の構造を大きく動かす3つを見ます。
- フロントヤード改革
フロントヤードとは住民と行政の接点、つまり窓口です。手続のオンライン化にとどまらず、「書かないワンストップ窓口」のように接点そのものを作り替えることが求められます。 - 情報システムの標準化
住民基本台帳や介護保険といった基幹系20業務のシステムを、国が定めた標準に準拠したものへ移行する取組で、目標は令和7年度末とされています。 - AIの利用推進
2025年(令和7年)6月に人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律(AI法)が公布され、計画は自治体にAIの活用等を進めていく責務があると明記しています。
最大の制約は技術ではなく人
繰り返し現れるのが人材不足です。DXの推進担当課室や情報政策担当課室の職員数が0人または1人の市区町村は189自治体。人材の確保と育成に関する方針を策定済みの市区町村も2024年(令和6年)4月時点で416自治体にとどまり、計画は令和9年度までの策定完了を求めています。
計画はその現実を率直に認めます。高度専門人材は自治体内部での育成が容易ではないうえ、デジタル分野では専門性が高度に分化しているため、内部に適切な人材がいない場合は外部人材の活用を積極的に検討すべきだとしています。
外部人材の受け入れを制度と財政で後押し
CIOを専門的知見から補佐するCIO補佐官等の任用形態では、民間企業との雇用関係を継続し従業員としての地位を保有したまま任用すること、民間水準を考慮して給与を設定すること、テレワーク等を活用した柔軟な働き方を設定することが可能とされています。
外部からデジタル人材をCIO補佐官等として任用等している市区町村は2023年(令和5年)4月時点で219自治体。国は任用や募集の経費に特別交付税による財政措置を講じ、2025年度中に全ての都道府県で人材プール機能を含む推進体制を構築することを目標に掲げています。
公共セクターに関わる人材への示唆
計画が育てようとする人物像もヒントです。庁内のDX推進リーダーは、実務担当課とデジタル企業や高度専門人材とを橋渡しし、変革を主導できる人材となるよう育成することが重要だとされています。求められるのは技術を作る力より、業務を理解して技術と現場をつなぐ力です。
これは公共セクターのコンサルティングが担ってきた役割と重なります。
よくある質問
この計画は自治体にとって義務ですか
計画に記載された自治体の取組に関する内容は、地方自治法にもとづく技術的助言です。強制ではありませんが、国の支援策や財政措置がこれに沿って組まれます。
基幹業務システムの標準化はいつまでですか
基幹系20業務のシステムについて、令和7年度末までの移行を目指すとされています。ただし事業者のリソースの逼迫などで令和8年度以降の移行とならざるを得ないシステムは、別枠で期限が設定されます。
民間に在籍したまま自治体の仕事に関われますか
計画では、CIO補佐官等について民間企業との雇用関係を継続し従業員としての地位を保有したまま任用することが可能だと整理されています。
まとめ
第5.0版は、8つの重点取組を並べた計画書であると同時に、それを担う人が足りないという現実を正面から書いた文書でもあります。窓口の作り替え、システムの標準化、AIの実装という重い課題に対し、自治体は外部の知見を借りて進むことを前提に置き始めました。公共セクターに関わる人材には、専門性を発揮できる場が広がる局面です。
出典:自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画【第5.0版】(総務省、2025年12月17日)
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