パブリック(公共)コンサルと民間コンサルとの違い

近年、コンサルティング業界において存在感を高めているのがパブリック(公共)コンサルです。かつては一部のシンクタンクが担う政策調査や研究が中心でしたが、現在では外資系・国内系の総合コンサルティングファームも含めて調査・戦略立案から実行支援まで大規模なビジネスへと進化を遂げています。

社会構造の急激な変化やデジタル化の波が押し寄せる中、行政や自治体はかつてないほど高度で複雑な課題に直面しています。当該課題を解決するためには、民間企業で培われたビジネスの知見やテクノロジーの活用が不可欠であり、パブリックセクター領域におけるコンサルタントの需要は飛躍的に増加しています。本記事では、公共コンサルと民間コンサルとの違いについて、また公共領域においてもサービス提供している総合コンサル、そしてパブリックコンサルに向いている人材について、公的機関や各ファームの公式情報をもとに解説します。

目次

パブリック(公共)コンサルの定義と範囲

パブリック(公共)セクターとは

そもそも公共セクター(パブリックセクター)とは、国や地方自治体をはじめとする、公的なサービスを提供する機関、当該機関がカバーする領域の総称です。具体的には、中央省庁(内閣府、経済産業省、総務省、デジタル庁など)、地方自治体(都道府県、市区町村)、独立行政法人、国立大学法人、公立病院、さらには政府系金融機関などが含まれます。民間企業(プライベートセクター)が市場経済における利益追求を目的とするのに対し、公共セクターは国民や住民の生活向上、社会基盤の維持・発展、安全性や公平性の担保を目的としています。

パブリック(公共)コンサルの業務領域

パブリックセクターにおけるコンサルティングは、前述の公的機関が抱える政策的・行政的課題に対し、専門的な知見をもって解決策を提示し、実行を支援するサービスを指します。主な業務領域は非常に多岐にわたります。

業務例

  • 政策の立案・調査支援
    国内外の事例調査、データ分析、政策の効果検証などを行い、省庁が新たな政策やガイドラインを策定するためのエビデンスを提供します。
  • 行政DX・デジタルガバメントの推進
    デジタル庁や総務省が推進するシステムの標準化やクラウド移行、業務プロセス改革(BPR)、マイナンバーカードを活用した住民サービスの向上を支援します。
  • 社会インフラ・スマートシティの構築
    自動運転、MaaS(Mobility as a Service)、再生可能エネルギーの導入など、次世代の都市づくりに向けた実証実験のプロジェクトマネジメントを行います。
  • 官民連携(PPP/PFI)の推進
    公共施設の整備や運営において、民間企業の資金やノウハウを活用するための事業スキーム構築やアドバイザリー業務を担います。

民間コンサルとの本質的な違い

コンサルティングの手法や問題解決のアプローチは民間企業向けと共通する部分が多いものの、ビジネスの前提となる構造には本質的な違いが存在します。

目的とKPIの根本的な違い

民間企業に対するコンサルティングでは、最終的な目的は「売上・利益の最大化」や「株主価値の向上」に帰結します。評価指標(KPI)も、コスト削減額、売上成長率、ROI(投資利益率)など、定量化しやすい経済的指標が中心です。
一方でパブリックセクターにおいては、「社会課題の解決」「住民のQOL(生活の質)向上」「行政サービスの公平性と透明性の確保」等が目的となります。KPIは「待機児童の減少数」「温室効果ガスの削減率」「行政手続きのオンライン化率」など多岐にわたり、単純な経済的合理性だけでは測れない難しさがあります。一方で、税収にも限りがあるため、昨今はPPP/PFI、コンセッションの導入が盛んであることからも経済合理的な要素も重要であるといえます。

ステークホルダーの複雑さと合意形成

民間企業のプロジェクトでは、経営陣の意思決定が下されれば、トップダウンで施策が実行されることが一般的です。しかし、公共セクターにおいては、中央省庁、地方自治体、民間企業、有識者(大学教授等)、そして最終的な受益者である国民・住民など、関与するステークホルダーが極めて多岐にわたります。
それぞれの立場によって利害が対立することもあるため、公共コンサルでは、複雑な利害関係を紐解き、各所との調整を重ねながら最適解を導き出す、極めて高度な合意形成スキルも求められます。

予算制と調達プロセスの違い

行政機関のプロジェクトは、原則として「単年度予算主義」に基づいています。そのため、プロジェクトの期間は年度内に設定されることが多く、限られた期間内で確実に成果物(報告書やガイドライン、システムの要件定義など)を納品する厳格なプロジェクトマネジメントが求められます。
また、案件の受注方法も、民間のように相対の営業で決まることは少なく、公平性と透明性を担保するための「一般競争入札」や「プロポーザル方式(企画競争)」といった公的な調達プロセスを経る必要があります。コンサルティングファームは、仕様書に基づいた精緻な提案書を作成し、プレゼンテーションを経て落札・受託するという特有のプロセスを踏みます。

パブリック(公共)コンサルの主要プレイヤー

パブリック(公共)コンサルティングの担い手は非常に多様です。デロイト トーマツやPwC、EY、KPMG等のBIG4と呼ばれる総合コンサルティングファームが戦略策定から実行支援まで一気通貫で手がける一方、野村総合研究所や三菱総合研究所等のシンクタンク系ファームは政策調査・提言に強みを持ちます。

また、パシフィックコンサルタンツや日本工営等の建設・開発コンサルタントはインフラ整備や都市計画の分野で長い実績を有し、アクセンチュアやアビームコンサルティング等のIT系ファームは行政DXやシステム構築の領域で存在感を高めています。

更に、地域密着型の中小コンサルティング会社やNPO等が自治体の現場に入り込み、住民目線での課題解決を支援するケースも増えています。

以上の通り、パブリックセクター領域では規模や専門性の異なる多種多様なプレイヤーがそれぞれの強みを活かして活動しています。各ファームの特徴や強みの詳細については、以下にまとめていますので、ぜひご覧ください。

パブリック(公共)コンサルに向いている人

民間企業とは異なる特性を持つパブリック(公共)コンサルにおいて、どのような人材が活躍できるのでしょうか。業界の求人動向や業界の特性を踏まえると、以下の要件を満たす人材が高い評価を得る傾向にあります。

社会課題解決への強い当事者意識を持つ人

重要なのは、「日本の社会システムを良くしたい」「地域の課題を解決したい」という強い志と当事者意識です。扱うテーマは、少子高齢化、医療・介護制度の維持、インフラの老朽化、災害対策など、国家レベルの重厚な課題ばかりです。民間ビジネスの論理だけでは割り切れない問題に対しても、社会的な使命感を持って真摯に向き合えるマインドセットが不可欠です。

複雑な利害関係を調整するファシリテーション能力がある人

前述の通り、パブリックセクターのプロジェクトには多数のステークホルダーが関与します。時には相反する意見をまとめる必要があり、論理的思考力(ロジカルシンキング)に加えて、高い対人コミュニケーション能力やファシリテーション能力が求められます。相手の立場や背景を理解し、粘り強く対話を重ねながら、プロジェクトを前に進める力が問われます。

中長期的な視点で物事を考えられる思考力

公共分野のプロジェクトが社会に与える影響は長期にわたります。今日策定した政策やシステムが、10年後、20年後の国民の生活基盤となることも珍しくありません。目先の成果や効率性にとらわれることなく、「将来の社会にとって何が最適か」というマクロ的かつ中長期的な視座を持ち、多角的なデータ分析に基づいた仮説構築ができる思考力が求められます。

パブリック(公共)コンサルが注目される背景

なぜ今、コンサルティング業界においてパブリックセクター領域がこれほどまでに拡大し、注目を集めているのでしょうか。そこには、国を挙げた明確な動向と社会構造の変化が存在します。

複雑化する社会課題と地方創生の必要性

日本は世界に先駆けて「超高齢社会」に突入しており、社会保障費の増大、労働人口の減少、地方における過疎化といった深刻な課題に直面しています。これらの課題は、行政の力だけで解決できる限界を超えつつあります。そこで、経済産業省や内閣府などが中心となり、民間企業のイノベーションを取り入れた課題解決手法が模索されています。コンサルティングファームは、官と民を繋ぐ「ハブ」として、新たなビジネスモデルの構築や政策の社会実装をリードする役割を期待されています。

官民連携(PPP/PFI)の推進

厳しい財政状況や公共インフラの老朽化を背景に、民間資金とノウハウを活用する「PPP(官民連携)」や「PFI(民間資金等活用事業)」の導入が拡大しています。内閣府の「PPP/PFI推進アクションプラン」においても、空港、水道、アリーナ、公園などの公共施設運営に民間を参画させるコンセッション方式の目標が掲げられています。この領域において、需要予測、財務モデリング、リスク分析、契約スキームの構築といった高度な専門知識を提供するコンサルタントの存在は不可欠となっています。

デジタル庁主導の「行政DX」の本格化

2021年9月のデジタル庁創設を皮切りに、国および地方自治体におけるデジタル・トランスフォーメーション(行政DX)が急加速しています。デジタル庁の「デジタル社会の実現に向けた重点計画」や、総務省の「自治体DX推進計画」に基づき、地方自治体の主要業務システムの「ガバメントクラウド」への移行や標準化が強力に推進されています。
これに伴い、現状の業務プロセスの可視化、BPRの実施、システム要件の定義、ベンダー選定の支援など、コンサルティングファームが担うべき役割が急増しており、テクノロジーの知見を持つコンサルタントの需要が爆発的に高まっています。

まとめ

ビジネスの知見で公共を変える、というキャリア

パブリックセクターコンサルティングとは、単なる行政の手伝いではなく、民間企業で培われた最先端のテクノロジーとビジネスの知見を駆使し、国や地域社会のあり方を根本から変革する非常にダイナミックな仕事です。売上や利益という枠組みを超え、社会的インパクトや数百万人の住民の生活向上に直結する仕事は、他の領域では得難い圧倒的なやりがいと使命感をもたらします。

BIG4をはじめとするコンサルティングファームでは、現在もパブリックセクター部門の採用を強化しており、ITコンサルタント、SIer出身者、事業会社の企画部門出身者、そして国家公務員や地方公務員からの転職など、多様なバックグラウンドを持つ人材が活躍しています。「自らの専門性やビジネススキルを、社会課題の解決や国づくりに活かしたい」と考える方にとって、パブリック(公共)コンサルタント職は極めて魅力的なキャリアパスとなるでしょう。

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Writer

パブリックコンサル(公共セクターのコンサルタント)業界に特化した転職支援サービスPUCOBEE(パコビー)編集部です。パコビーでは”Public Consulting with Business Expertise”をコンセプトに、ビジネスの知見を活用したパブリックコンサルへの転職を検討している方に役立つ情報をお届けしています。

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