少子高齢化の進行と社会保障費の膨張により、日本の医療・介護制度は構造的な転換期を迎えています。こうした課題に対し、医療・ヘルスケア業界での実務経験を持つ人材が、パブリック(公共)コンサルの領域で活躍する機会が広がっています。本記事では、製薬・医療機器・病院経営などヘルスケア業界からパブリック(公共)コンサルへの転職を検討する方に向けて、求められる背景、業界経験が活きる政策テーマ、職種別の転職ルート、年収やキャリアパスの展望、そしてBIG4各ファームの実際のヘルスケア領域求人までを体系的に解説します。公共領域でのヘルスケア・医療コンサルタントへの転職を自身のキャリア戦略を描く一助となれば幸いです。
医療・ヘルスケア出身者がパブリック(公共)コンサルで求められる背景
社会保障費の構造的増大と医療部門の存在感
国立社会保障・人口問題研究所が公表する基幹統計「社会保障費用統計」の最新版(令和5年度=2023年度)によれば、社会保障給付費(ILO基準)の総額は135兆4,928億円に達しています。このうち医療は45兆5,799億円、年金は56兆3,936億円、福祉その他は33兆5,192億円となっています(出所:国立社会保障・人口問題研究所「社会保障費用統計」)。最新の求人一覧はPUCOBEEヘルスケア領域求人ページからご確認いただけます。
新型コロナ対策費の減少により総額は2022年度・2023年度と2年連続で前年度から減少していますが、医療・介護を含む社会保障は引き続き、政府にとって重要な政策課題の一つです。後述する医療DX、地域医療構想、ヘルスケア産業政策など、関連する個別アジェンダの実行を担うのが、官公庁・自治体を主要クライアントとするパブリック(公共)コンサルの役割となります。
BIG4が公共セクター×ヘルスケアに注力する理由
総合コンサルの代表格であるBIG4(Deloitte、PwC、EY、KPMG)はいずれも、官公庁・地方自治体・独立行政法人を対象としたパブリックセクター部門の中にヘルスケア領域のチームを擁しています。後述するパコビー掲載の求人を見ると、医療政策の調査・立案支援、医療DXの実行支援、医療機関の経営支援、ヘルスケア産業政策の調査研究などが、各ファームの主な業務として掲げられています。クライアントが抱える課題は制度設計・データ活用・現場運営にまたがる複合的なテーマであり、求人票でも「医療業界での実務経験」が必須要件または歓迎要件として明記されているケースが目立ちます。
医療現場・業界知見がもたらす独自価値
パブリック(公共)コンサルにおいて、医療・ヘルスケア業界出身者が持ち込める知見としては、病院での経営、マネジメント、オペレーション、DX経験、診療報酬体系・薬価制度・医療法体系の実務的理解、医療従事者・医療機関とのコミュニケーション能力、医薬品・医療機器の薬事規制や流通構造への知見、臨床現場や経営現場での課題発見力などが挙げられます。これらは政策立案や制度設計、現場との橋渡しを担うパブリック(公共)コンサルの仕事において、評価される要素となります。
業界経験が活きる主要政策テーマ
病院経営領域
都道府県・市町村レベルでは、地域医療構想、地域包括ケアシステム、医師の働き方改革、病院再編、公立病院経営強化など、医療提供体制に関する施策が継続的に進められています。これらは自治体・公立病院などが直接抱えるテーマであり、後述する求人でも「自治体立病院の建て替え・経営分析支援」「医療機関・介護施設の収益改善・経営戦略策定」などが業務内容として明記されているポジションがあります。病院経営・医事の実務経験者にとっては、自身の知見と重なるアジェンダが多い領域です。
医療政策の調査・立案
厚生労働省をはじめとする中央省庁では、社会保障制度改革、医療・介護政策の見直し、医療労働政策、災害医療対策など、政策レベルでの調査研究・立案・実行支援案件が継続的に発注されています。後述する求人でも、「厚生労働省や都道府県の医療政策計画策定支援」「医療政策・医療情報・健康産業に係る調査研究」「保健・医療・介護領域の官公庁・地方公共団体向けコンサル」などが業務内容として明記されているポジションがあります。製薬・医療機器業界での薬事・薬価・市場分析の経験は、こうした上流の政策案件で活かせる知見として位置づけられます。
医療DX
政府は2022年、内閣総理大臣を本部長とする「医療DX推進本部」を内閣に設置しました(出所:内閣官房「医療DX推進本部」)。同本部は2023年に「医療DXの推進に関する工程表」を決定し、①全国医療情報プラットフォームの創設、②電子カルテ情報の標準化等、③診療報酬改定DXの3本柱を中心に、デジタル庁・厚生労働省・総務省・経済産業省が省庁横断で取組を進めています(出所:厚生労働省「医療DXについて」、デジタル庁「健康・医療・介護」)。
医療DXは、医療データの二次利用、PHR(パーソナルヘルスレコード)、オンライン資格確認の用途拡張、電子処方箋など多領域で具体的な施策が進行中です(出所:厚生労働省「医療DXについて」)。当該プロジェクトでは、医療現場の業務プロセスを理解した人材が、政策の実装可能性を検討する役割を担います。
病院経営・医事からの転職ルート
病院の経営企画、医事課、医療情報部門からの転職も有力なルートです。後述するデロイトグループの求人では「病院等医療施設の医事課・企画課での実務経験5年以上」が必須要件の選択肢として明記されているなど、病院運営経験者を想定したポジションが用意されています。
活かせる経験
具体的には、医業収益、病床稼働率、DPC/PDPS(包括医療費支払い制度)の運用・分析経験などの病院経営指標の改善経験、電子カルテ・レセプト等の医療情報システムの導入・運用経験、地域連携・地域包括ケアシステムへの関与経験などです。
キャリアチェンジの実例
例えば、後述する有限責任監査法人トーマツの【パブリックセクター・ヘルスケア事業部】医療機関・介護施設 経営コンサルタントの求人では、「病院等医療施設において医事課・企画課での実務経験5年以上」が必須要件の選択肢の一つとして明記されています。病院経営企画から自治体の医療計画策定支援や地域医療構想関連の業務へ、経験を活かして転じることが想定された設計のポジションです。また、デロイトトーマツ/リスクアドバイザリーやEY新日本監査法人にもパブリック(公共)領域における同様のポジションがあります。
MR・医療機器・製薬からの転職ルート
製薬企業のMRや医療機器営業、本社マーケティング、薬事担当者からの転職先として、BIG4のヘルスケア/ライフサイエンス部門には複数のポジションがあります。後述する求人を見ると、ライフサイエンス・ヘルスケア業界での実務経験が必須要件または歓迎要件として明記されているケースが多く、市場分析・薬事申請・薬価交渉・本社マーケティングといった経験は、コンサルティング案件で活かせる経験として位置づけられています。
転職時に評価される経験
具体的に評価されやすいのは、市場分析・マーケティング戦略の立案経験、薬事申請や薬価交渉のプロジェクトマネジメント経験、本社マーケティング・経営企画でのデータ分析経験、海外本社や規制当局との折衝経験などです。これらは政策レベルの調査研究や、医療技術評価(HTA)関連の業務、産業振興プロジェクトのPMOなどに直接活きます。
転職準備のポイント
未経験職種への転職となるため、論理的思考力やドキュメンテーション力を示すケース面接対策は重要です。加えて、社会保障制度・医療政策・医療DXなどの公共領域の論点を体系的にインプットしておくことが、面接時の説得力を大きく高めます。
年収・待遇の変化
総合コンサルの年収レンジ目安例
- アナリスト:550万〜700万円
- コンサルタント/シニアコンサルタント:700万〜1,200万円(中途入社の主なエントリーポイント)
- マネージャー:1,000万〜1,800万円
- シニアマネージャー:1,500万〜2,000万円
- パートナー:2,000万円以上
※本記事の年収データは、公開情報を参考にした2025〜2026年時点の傾向を示したものです。実際のオファー年収は、個々の経験・スキル・応募ポジションにより大きく変動します。
金銭面以外の待遇変化
金銭面以外でも、業務難易度・責任範囲の拡大、プロジェクト単位での働き方、研修・資格支援などの自己成長機会、リモートワーク・フレックス制度の柔軟性など、得られるものは多岐にわたります。年収だけでなく、キャリア資産の蓄積という観点で総合的に評価することが重要です。
キャリアパスの展望
医療・ヘルスケア業界出身者がパブリック(公共)コンサルでキャリアを築くと、以下のような展望が開けます。
ファーム内でのキャリア形成
BIG4のヘルスケア領域チームには、ヘルスケア領域のスペシャリストとしてマネジャー・パートナーへ昇進する道、官公庁案件と民間案件を横断するクロスセクターの専門家として活躍する道、医療DXや医療データ活用領域でのテーマリーダーになる道など、いくつかのキャリアの方向性が考えられます。
ファーム外でのキャリア展開
パブリック(公共)コンサルでの経験を経て、独立行政法人やシンクタンクでの政策研究職、医療系PEファンドやベンチャーキャピタル、製薬・医療機器企業の経営企画・パブリックアフェアーズ部門、ヘルステックスタートアップなどに転じる選択肢もあります。政策と産業、現場と制度をつなぐ専門性として、その後のキャリアの選択肢を広げる経験になります。
BIG4ヘルスケア領域の具体的な求人例
ここでは、PUCOBEEに掲載されているBIG4各ファームのヘルスケア領域求人から、特徴的なポジションをご紹介します。製薬・医療機器・病院経営など、ご自身のバックグラウンドに近い案件をイメージしていただければと思います。
Deloitteグループ
医療機関・介護施設経営から官公庁政策まで国内最大の案件層
デロイトトーマツグループは、有限責任監査法人トーマツの「パブリックセクター・ヘルスケア事業部」と、合同会社デロイトトーマツのリスクアドバイザリー(RA)配下のヘルスケアチームの両輪で、ヘルスケア×公共領域に厚みを持っています。
例えば、有限責任監査法人トーマツの【パブリックセクター・ヘルスケア事業部】医療機関・介護施設 経営コンサルタントは、医療機関・介護施設の収益改善、経営戦略策定、組織再編(地域医療再編・合併・ガバナンス構築)、人事制度構築、さらに厚生労働省や地方自治体の医療介護政策の調査・立案・実行支援までを一気通貫で担うポジションです。スタッフ〜マネジャークラスまで募集があり、勤務地は東京・大阪・名古屋・福岡から選択可能です。応募資格には「病院等医療施設の医事課・企画課での実務経験5年以上」も含まれており、病院職員からの転身ルートが明示されています。
このほか、合同会社デロイトトーマツでは、医療/ライフサイエンス向けコンサルタント、保健・医療・介護領域の官公庁・地方公共団体向けコンサルタント、ヘルスケア情報分野コンサルタント/医療情報分析アナリストなど、専門特化型のポジションも多数あります。中央省庁領域では、Central Government(中央省庁・社会保障制度改革・行政DX推進領域)のように、社会保障制度改革そのものを対象としたポジションも開かれています。
PwCグループ
G&PSの「健康・医療」イニシアチブと地域社会課題
PwCコンサルティング合同会社のG&PS(Government & Public Services)は、テーマ型イニシアチブの一つとして「健康・医療」を掲げ、社会福祉・保障や産業育成、DXなどのリエゾン型イニシアチブと連動させた支援を行っています。
たとえばPwCコンサルティング合同会社 パブリックサービスコンサルタント【G&PS】は、官公庁・地方自治体・公的機関・大学・研究機関を主要クライアントとし、社会保障政策の変革、健康・医療領域の政策立案・実行支援を担うポジションです。コンサル経験者と、パブリック分野の実務経験者(3〜5年以上)の両方を歓迎しています。
また、PwC Japan有限責任監査法人のRA:国・地域の社会課題解決支援コンサルタントは、医療・福祉、地方創生、災害復興、教育、スポーツ振興など複合的な社会課題に第三者の独立的立場から関与するポジションです。
EYグループ
公共部門アドバイザリーで30年超のヘルスケア実績
EY新日本有限責任監査法人の公共部門アドバイザリー ヘルスケア分野のコンサルティング業務(パブリック分野_ヘルスケア)は、中央省庁・特殊法人・独立行政法人・国立大学法人・地方公共団体などへ30年以上アドバイザリーサービスを提供してきた実績を背景に、医療政策、上流医療情報コンサル、医療戦略コンサルといった「上流」案件の多いポジションです。
具体的なプロジェクト事例として、医療政策・医療情報・健康産業に係る調査研究、厚生労働省や都道府県の医療政策計画策定支援、医療労働に係る調査研究、災害対策における医療視点でのアドバイザリー、自治体立病院の建て替え・経営分析支援などが挙げられています。コンサル経験は必須ではなく、医療業界経験者が「未経験コンサル」としてチャレンジしやすい設計であることも特徴です。スタッフ〜マネジャークラスを募集しています。
KPMGグループ
Life Sciences & Healthcareでガバメント領域も対応
KPMGコンサルティング株式会社のLife Sciences & Healthcare:ヘルスケア領域コンサルタントは、厚生労働省・内閣府・経済産業省・日本医療研究開発機構(AMED)・医薬品医療機器総合機構(PMDA)など、ガバメント領域のヘルスケアドメインに直接関わるポジションです。
業務は、国家プロジェクト事業のPMO支援、医療・健康データ利活用の事業化支援、ライフサイエンス業界の市場調査・構想支援、地域中核医療機関を起点とした医療連携ネットワークの強化支援、疾病発症予防・行動変容アプローチの事業化支援など、政策と産業を橋渡しする上流案件が中心です。シニアコンサルタント以上のクラスを募集しています。
同じKPMGグループの有限責任あずさ監査法人では、ヘルスケア・ウェルビーイング アドバイザリーのポジションもあります。日本政府や国連機関・国際機関の政策立案・実行支援、デジタルヘルス導入支援、ヘルステック・メディカル系企業(スタートアップ含む)の事業戦略策定など、国内に閉じないグローバルヘルスや産官学連携を志向する方向けの特徴的な求人です。
このほかPUCOBEEには、上記以外にも地域・職位・テーマで多様な選択肢が掲載されています。最新の求人一覧はPUCOBEEヘルスケア領域求人ページからご確認いただけます。
まとめ
医療・ヘルスケア業界からパブリック(公共)コンサルへの転職は、社会保障改革という政策課題に専門性を活かせるキャリアの選択肢の一つです。MR・医療機器・製薬出身者、病院経営・医事出身者、それぞれに活かせる強みがあります。一方で、コンサルティング特有のスキルセットの習得や入念な転職準備は欠かせません。
自身の経験がパブリック(公共)コンサルでどのように評価されるのか、どのファーム・ポジションが最適なのかを見極めるには、業界に精通したキャリアアドバイザーに相談するのが最短ルートです。
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PUCOBEEは、パブリック(公共)コンサル業界に特化した転職支援サービスです。医療・ヘルスケア・ライフサイエンス業界出身者のBIG4を中心とした総合コンサルのパブリックセクター(公共)部門への転職サポートをハンズオンで、完全無料で実施しています。
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