近年、政府が主導するデジタル化・DX推進の動きは、社会全体に大きな変革をもたらしています。コンサルティング業界においても、新たなビジネスチャンスとして公共DXに注力するコンサルファームも増加傾向にあります。本記事では、政府のデジタル化推進がコンサルティング業界にどのような影響を与えているのか、その現状と今後の展望についてポイントを解説します。
政府のデジタル化推進の現状
2020年以降、新型コロナウイルスの影響を受け、社会全体のデジタル化の重要性が再認識されました。これを受けて、日本政府は行政手続きのオンライン化や企業のDX支援など、多方面でデジタル化施策を進めています。
主な施策例
デジタル庁の設立
政府全体のデジタル化を加速させるため、2021年にデジタル庁が設立されました。行政サービスのオンライン化をはじめ、各省庁のデジタルインフラの整備・統括を担い、国民がより利便性の高い行政サービスを受けられる環境づくりを推進しています。
マイナンバー制度の活用拡大
行政手続きの簡素化・迅速化を目指し、マイナンバー制度の活用が拡大しています。現在では、税・社会保障・医療・教育などの分野で利用が進んでおり、マイナンバーカードを活用した公的個人認証の普及が進められています。マイナポータルを通じた各種手続きのオンライン化も推進中です。
GIGAスクール構想
教育分野のデジタル化として、全国の小中学校に1人1台の端末を配布し、高速通信ネットワークを整備する「GIGAスクール構想」が進められています。これにより、オンライン授業やデジタル教材の活用が加速し、個別最適化された学びの環境が提供されています。
企業向けDX支援
中小企業を中心に、デジタル技術を活用した業務効率化や新たなビジネスモデルの導入を支援する施策が展開されています。具体的には、DX推進のための補助金制度や専門家によるコンサルティングサービスが提供され、企業の競争力向上を後押ししています。代表的な補助金施策としてIT導入補助金が挙げられます。
コンサル業界への影響
政府主導のデジタル化推進やDX推進により、コンサルティング業界には新たなビジネスチャンスが広がっています。
特に以下の分野での需要が急増し、業界の成長を後押ししています。
公共DXコンサルティング
政府のデジタル化推進政策により、行政機関向けコンサルティングも新たな成長分野となっています。特にデジタル庁を中心とした取り組みにおいて、以下のようなサービスが提供されており、行政機関もデジタル化の波に対応する必要があることから、コンサルティング業界の新たな収益機会を生み出しています。
デジタル化 / DX戦略支援
行政サービスの効率化や利便性向上を目指したロードマップ作成等。
システム構築支援
AI、IoT、RPAなどの具体的な技術導入を通じて、業務効率化や新たな価値創出を実現。
既存システムの刷新や、新たなデジタル基盤の設計・導入支援。
データ活用支援
行政データの統合・活用を通じて、政策立案やサービス向上に寄与。
組織変革支援
デジタル化に伴う業務プロセスや企業文化の改革を支援。
セキュリティコンサルティング
デジタル化が進むにつれ、サイバーセキュリティの重要性が急速に高まっています。
行政に対するサイバーの脅威に対応すべく、セキュリティコンサルティングの需要も拡大しています。
セキュリティリスク評価
企業や行政のITインフラの現状を分析し、潜在的な脆弱性を特定。
セキュリティ対策の導入支援
セキュリティシステムの設計や実装、運用プロセスの最適化を支援。
社員向け教育プログラム
情報漏洩やサイバー攻撃に対する防御意識を高めるためのトレーニングを提供。
コンサルタントに求められる能力の変化
公共DX推進の流れを受けて、コンサルティング業界においても「求められる能力」も大きく変化しています。従来の論理的思考力や業界知見に加え、デジタル技術の理解やデータ分析力、新たなビジネスモデルの創出能力が重要なスキルとして浮上しています。
デジタル技術に関する知識 – AI・IoT・クラウドの理解が必須
AI(人工知能)、IoT(モノのインターネット)、クラウドコンピューティングなど、最新のデジタル技術を活用したコンサルティングが求められています。企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)を支援するためには、単なる概念理解にとどまらず、実際の活用方法や業務への適用事例を深く理解することが不可欠です。特に、生成AIやRPA等の自動化におけるリテラシーは、企業の競争力向上に直結するため、コンサルタントにとって習得すべきスキルとなっています。
データ分析能力 – 意思決定を支えるデータドリブンなアプローチ
昨今は、これまで以上にデータを基にした問題解決力が求められています。ビジネスの意思決定は、従来の経験則や勘だけでなく、データの分析・活用をベースにした戦略策定へとシフトしています。サイバーセキュリティ、サステナビリティ等のあらゆる領域でもデータ活用や分析の重要性が高まっています。
新たなビジネスモデルの創出 – デジタルを活用した革新
従来のコンサルティング手法だけではなく、デジタル技術を活用した新しいビジネスモデルの創出が求められています。
下記は一例ですが、テクノロジーを活かした新しい価値提供モデルを設計できることが、今後の競争優位性を生む鍵と言えます。
具体例
- サブスクリプション型のコンサルティングサービス(継続的な価値提供)
- データプラットフォームの提供(クライアントのデータを活用した新たなビジネス機会の創出)
- 生成AIを活用した業務自動化ソリューション
コンサルティング業界の進化
新たな価値創造への挑戦
近年、コンサルティング業界は急速に変化し、新たな価値を提供するための進化が求められています。
特に以下の3つの要素が、業界の未来を形作る重要なポイントとなっています。
専門性の深化 – デジタル時代のプロフェッショナル育成
テクノロジーの進化に伴い、デジタル技術やデータ分析に精通したコンサルタントの育成が急務となっています。AI、クラウド、ビッグデータなどの知識を活用し、企業のDXを支援できる専門家が求められています。今後は、従来の戦略・業務改善だけでなく、データドリブンな意思決定を促進できる人材が不可欠と言えます。
多様なサービス展開 – DX、セキュリティ、サステナビリティへの対応
企業が直面する課題は複雑化しており、コンサルティングの領域も拡大しています。DX支援にとどまらず、サイバーセキュリティやサステナビリティ等の新たな領域が求められています。特に、環境・社会・ガバナンス(ESG)対応の重要性が高まり、公共領域においても持続可能性を念頭に置いたコンサルティングの需要が増加しています。
ビジネスモデル変革の支援能力 – :デジタル技術を活用した革新
コンサルティング業界自体でも、デジタル技術を活用した新たなビジネスモデルの構築が求められています。例えば、データ活用型の継続的なコンサルサービスや、SaaS型のソリューション提供など、従来のプロジェクト単位の支援から、より長期的かつ効率的な支援へとシフトする動きが見られます。また、生成AIの活用による業務効率化や、リモートによるコンサルティングの普及も、新たな可能性を広げています。
まとめ
政府主導のデジタル化推進により、コンサルティング業界には新たなビジネスチャンスが生まれています。昨今では公共DXコンサルティングの分野においても、従来の手法に加えて生成AIの活用が注目を集めています。また、サブスクリプション型サービスや自動化ソリューションなど新たなビジネスモデルも台頭しています。パブリックコンサル業界は専門性の深化、多様なサービス展開、デジタル活用の革新を通じて国とともに進化を続けています。

